THE HUNTING PARTY
1971年。監督ドン・メドフォード。主演オリヴァー・リード。
なんだかマカロニ風なハリウッドウエスタンなのであった。なんだか日本版のポスターが「愛と青春の旅立ち」みたいな、「愛と哀しみの果て」みたいな、違うかもしれないがそんな感じでウエスタンぽくないのであった。とまあ珍奇な西部劇なのだが、安定感抜群のジーン・ハックマンがキレキレなので安心して鑑賞することができるのである。
金持ちのルーガーは定期的に仲間を集めて狩りをしているのだった。今回もそのようになり嫁を残して自前の汽車で狩りに、タイトルどおりにハンティングパーリーに出発したのであった。
だがルーガーにとって興醒めなことに、パーリー開始前に嫁のメリッサが誘拐されたとの連絡があったのである。
下手人はフランク一味であった。
あかん、それはあかんで、というよりなんか屈辱感からルーガーは仲間とともにフランク一味を狩ることにするのだった。
で、フランクはというと、こんな刹那的な生き方はいけないなあ、他人を恫喝したり殺めたり好き勝手に振る舞うのはもうやめにしたいなあ、などと思うようになり、ぼくもせめて読み書きできたらなあ、と考えていたところで子供たちに野外で読み書きを教えていたメリッサに出くわし、じゃあ、って拐っていたのである。
最初は逃走を試みるなど抵抗していたメリッサであったが、サディスティックでかなり残念な亭主ルーガーとは真逆のフランクの人間性に徐々に惹かれていくのである。
お前らのメシなんか食わん、このまま餓死するんや、と頑張っていたメリッサが限界をむかえてフランク、彼の相棒であるドクとともに缶詰の桃を貪るシーンは最高で、それはメリッサが人間を発見した瞬間なのであった。
やはり悪いジーン・ハックマンはたまらない。
たまらないのだが、「フレンチコネクション」と同年の映画のためか、こちらの西部劇は存在を抹消されたかのような感じだ。
個人的にはハックマンの最高傑作は「弾丸を噛め」なのだが、悪いハックマンには抗いきれない魅力がある。
もちろんフランク演じるオリヴァー・リードも最高であった。悪人だが人間らしさ全開で、まあ西部劇にはよくあることだが、拐われたメリッサ同様に観ているこちらも段々とフランクの良さに気づきはじめる。
被害者が加害者を狩る、という逆転の構図で、さらに悪人と善人の境界線も曖昧になって、なんというか人間てそんなに単純ではないよね、そんなんじゃないよね、みたいな感じのウエスタンに仕上がっていて愉快である。
そのぶん西部劇らしさら薄まってしまったわけだが、まあいいじゃないか。ラストもマカロニみたいな、というかアメリカンニューシネマみたいな虚無感に溢れていて、ぽさーっとなる。たまりません。
それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。では失敬。