片手にドーナツ、心に花束

西部劇、マカロニウエスタン、ときどきアメコミ。

【ザ・サムライ/荒野の珍道中】


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IL BIANCO.IL GIALLO.IL NERO

1974年。監督セルジオ・コルブッチ。主演ジュリアーノ・ジェンマ。トーマス・ミリアン。イーライ・ウォラック。音楽グイド&マウリツィオ・デ・アンジェリス。

監督がコルブッチである。「続・荒野の用心棒」や「ガンマン大連合」のコルブッチである。キャストは我らがジェンマ、「情無用のジャンゴ」や「血斗のジャンゴ」のミリアン、そして「続・夕陽のガンマン」の卑劣漢イーライ・ウォラック。凄まじいキャスティングである。この三人が揃って面白くないわけがないじゃないか。徹頭徹尾くだらなさ全開で最初から最後まで突っ走ってくれる。日本人からするとデタラメすぎる日本描写がさらに笑いを誘うこと請け合いだ。ここで怒っては駄目だ。笑おう。笑うんだ。

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映画「ザ・サムライ/荒野の珍道中」より


で、こんな話さ。
日本の将軍様からアメリカ大統領に献上される名馬シン・ミ。監視役のグレート・サムライ・ヤマモトと世話役の足軽サクラと共にシン・ミを乗せた汽車がネイティブアメリカンに襲撃されるのだった。ヤマモトはあっさり殺され、馬のシン・ミはネイティブに奪われてしまい身代金が要求される。やっべえじゃん、ってなって、たまたまそこに居合わせたウォラック演じるブラックジャックこと保安官ギデオン、身代金100万ドルを狙う我らがジェンマ演じる詐欺師のスイスチーズ、そして残されたミリアン演じるサクラのシン・ミ奪還の珍道中が始まる。

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映画「ザ・サムライ/荒野の珍道中」より

って、もちろん簡単には事は運ばない。保安官ギデオンはブラックジャックなる異名をもつわりには頭が悪いのか人がいいのか、あっ、とか言ってスイスに何かと出し抜かれる始末。サクラも一途なだけにやはりスイスに騙されてしまう。でもスイスはスイスで企画したことが思惑どおりにいかなくて、ぐちゃってなってしまうのであった。
だいたいサムライ・ヤマモトが汽車内で鎧兜を身につけているのが理解不能だ。まあ単に鎧兜を見せたかっただけだろうが、日本人からすると不可解な画になってしまう。さらにはシン・ミである。名馬ということだが、ポニーである。ただ、江戸時代の日本の在来馬は実際にポニーのような大きさだったらしいのであながち間違いではないわけだ。でもシン・ミって名前はどうなの?ミリアン演じるサクラも到底日本人には見えないが、そこはさすがに日米ハーフという設定である。アメリカ人と遊女の子供、ってのは戦後みたいで無理がある気がするが、まあいい。でも東京のサムライ学校に行きたいってのはなんだ?

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映画「ザ・サムライ/荒野の珍道中」より

全編を通してドリフのような演出がこれでもか、というほどに炸裂している。吊橋から落ちたギデオンをスイスがバイクで見事にキャッチしたり。シン・ミの身代金受け渡し場所へと向かう途中で立ち寄った町では、頭のおかしい兄弟に監禁された町民を救うために三人が女装して酒場に乗り込むくだりは最高である。本筋にあまり関係ないのがいい。単に女装させたかっただけとしか思えない。終盤ではスイスは赤いタンクトップにデニムとなり、西部劇なんだかそうでないのか、よくわからなくなるのもカオスだ。

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映画「ザ・サムライ/荒野の珍道中」より

主役3人があまりにも芸達者すぎて、普通のマカロニウエスタンならじゅうぶんにキャラが立つはずの敵役の元大尉たちが霞んでしまう。マカロニ御用達の元軍人は残念な男なのがお約束で、今回もやはり残念だった。捕えたギデオンを無意味な軍法会議にかけたり、いちいち壁際に立たせて銃殺刑にしようとしたり、軍人ごっこのおかげでことごとく計画が失敗するのである。

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映画「ザ・サムライ/荒野の珍道中」より

出てくる軍人、元軍人、すなわちアメリカ人がことごとく間抜けで、その対比としてサムライ精神をもつサクラを輝かせようとしているのか、そのつもりはないのか、よくわからないがサクラのサムライ道みたいなやつに日本人だとどうしても、え?ってなる。道中ずっと理解不能という態度のスイスと同じである。でも、なぜか、どうしてか、見終わる頃にはサクラに対して、じん、となっているこの不可思議。デタラメな日本文化の描写も不快になることはないのだ。コルブッチ・マジックであろうか。

最後は汽車襲撃の黒幕が明らかになり、ほのぼのとしたラストで幕を閉じる。まあジェンマが出てれば大抵はそうなるわけだが、くだらないと言えばかなりくだらないわけだが、たまーに見たくなる、そんなマカロニウエスタンである。

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映画「ザ・サムライ/荒野の珍道中」より

それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。では失敬。

 

↓コルブッチ監督の多彩さがわかる!

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