明日会おうよベストな体調で

西部劇、マカロニウエスタン、ときどきアメコミ。

【スロウ・ウエスト】

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SLOW WEST

2015年。監督ジョン・マクリーン。主演マイケル・ファスベンダー。音楽ジェド・カーゼル。

 

サンダンス映画祭ワールドシネマ部門グランプリ受賞、という冠のついた西部劇である。

そんなものに騙されてたまるか!という心持ちでのぞんだのだが、傑作であった。

まず風景がきれいだったなあ。撮影はアメリカではないようだけど。でも、もちろんそれだけではないのだった。

 

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映画「スロウ・ウエスト」より

 

で、こんな話さ。
スコットランドの貴族のボンボンであるジェイが好いてしまった女子ローズを追いかけてアメリカのコロラドまでやってくる。ジェイはサイラスを用心棒として雇い、ローズに会うために旅をつづけるのであった。

 

そう、スコットランドの貴族のボンボンであるジェイは消えた恋人ローズを追いかけてアメリカのコロラドまでやってきたのであった。

恋人、といってもジェイは貴族でローズは使用人と身分格差があって許されざる関係で、なんかイロイロあった末にローズだかローズのパパだか(忘れた)が雇用者であるジェイのパパだか伯父だか(忘れた)を殺してしまってアメリカへ逃亡した次第である。

 

めっちゃ好きや、障害があったほうが燃えるんや、ってジェイは単身アメリカまで追いかけるヤバい男の子。で、「西部の歩き方」みたいなガイドブック片手に奇跡的に生きながらえていたジェイも遂にヤバいじゃん、西部なめてたわあ、って崖っぷちに追い込まれたところを賞金稼ぎのサイラスという男に救われるのだった。

ジェイは用心棒としてサイラスを雇い、ここから二人の珍道中が始まるというわけだ。

 

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映画「スロウ・ウエスト」より

 

タイトルどおりダラダラと進行していくわけだが、決して退屈ではない。

サイラスのナレーション、オリオン座を銃でなぞるジェイ、カケスの夢など、結末に向けての暗示的なカットを散りばめつつ西部の現実を何度も突きつけられ、二人は西へ西へと向かう。

 

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映画「スロウ・ウエスト」より

 

賞金首であるローズ親子を狙うペインらと関わり、西部で生きていくことの厳しさを学んで少しづつ成長していくジェイであったが、むしろ保護者である賞金稼ぎのサイラスこそが大人として変わっていく。というより失ったものを取り戻していく。

 

一見、外国のお坊っちゃまが西部の荒野でビルドアップしていくような物語かと思えそうだがそうではない。最後までジェイは捨てなかったのである。変わらなかったのである。サイラスもローズも、西部で生きていくために変えてしまった、捨ててしまった何かを、西部の荒野でもまれながらも、ジェイは失わなかったのである。

 

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映画「スロウ・ウエスト」より

 

ラストにはジェイには残酷すぎる結末が待ち構えているのだが、救われる幼い命もあり、なんとも説明不能な様々な感情の波が押し寄せてくる。問答無用に傑作である。

 

それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。では失敬。

 

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