MANNAJA
1977年。監督セルジオ・マルチーノ。主演マウリツィオ・メルリ。音楽グイド&マウラリツィオ・デ・アンジェリス。
後期マカロニの傑作、と言われている、らしい。
原題であるマンナーヤとは斧のことであり、また主人公の通称でもある。すなわちマンナーヤの武器は斧、ということである。
バトルホークである。だからいきなり斧で賞金首の手首をぶった切るのであった。
で、こんな話さ。
マンナーヤは賞金首を連れて鉱山の町に向かうがそこはぬるーんとした、実に陰鬱とした町で、酒場すら閉鎖されているのであった。
なんだか面倒な町で、宿泊するのにも許可が必要とかで、マンナーヤは町を支配しているマッゴーワンの手下のボレルとかいう奴に会いに行くのであった。宿泊許可をいただくついでにボレルと博打で勝負したらあっさり勝ってしまって5000ドルをゲットしたマンナーヤは、もうええわ、って賞金首を解放するのであった。
黒いマントのボレル。ボスはマッゴーワンだが最悪なのはボレルなのである。ルックスからして悪人である。凶暴そうな犬を引き連れているので当然のように悪人である。
服装の乱れは風紀の乱れ!みたいな感じで酒場の経営を許さないマッゴーワン。
政治家でもないのにこんなことを勝手に決めてしまうのが西部の町の恐ろしいところだ。
彼は採掘した銀を輸送中にドルマン率いる悪党集団に奪われたりしてひどく困っていて、マンナーヤは自分を用心棒として雇いなはれと売り込むのだが、ギャンブルで負けたのを逆怨みしているボレルたちの襲撃を受けて負傷してしまうのであった。
助けてくれたのは旅芸人一座のジョニーたちなのだが、狙われてるくせにマンナーヤはまた町に戻るのであった。
で、性懲りもなくマッゴーワンはドルマンにまた銀を奪われたわー、さらには娘までさらわれてしもうたわー、身代金を要求されたけど払う気ないわー、ってあたふた。
今度はジョニーの酒場経営への許可を条件にマンナーヤは娘奪回を引き受けるのであった。
だがしかし。
かなり痛快なマカロニウエスタンなのであった。
斧かあ、なんだかなあ、などと見る前は思ったりしたものだがそんなことなかった。
まず、死んだような街並がよかった。
「続・荒野の用心棒」のような町だ。だから当然のように告げられるのである。「町を出たほうが身のためじゃ」と。
定番のようで意外と聞かない台詞だ。そして雨があがって部分的にぬかるんでいる町。
乾いた場所ではなく、敢えてぬかるみで殴り合う、それがマカロニの掟だ。
さんざん銃撃戦をしていたのに、マッゴーワンの娘が拐われた!との報告で急にみんな仲間、みたいな雰囲気になるのは苦笑せざるを得ない。
駅馬車の馭者、襲撃された駅馬車の生き残りの馭者が瀕死の状態で町に戻ってきたカットも凄い。
意味もなくカッコいいのだ。スローモーションを駆使した男前な演出を施されている。
不要な気もするのだが。でもこの映画、やたらと無意味な男前カットが多い。
展開は裏切り、復讐、裏切り、サプラーイズと思ったらまた裏切り。というハードさである。
マッゴーワンも、冒頭ではいいとこなしのボレルに対して「お前も潮時だな」みたいなことをボス面でほざいてたくせに、色んなことの黒幕がボレルだと判明した途端に「あいつには逆らえなかった」などと言い出すのである。
気づけば視力を奪われたマンナーヤは洞窟でせっせと夜なべして石斧をハンドメイドなのであった。
なんなんだよ。まだまだできる、俺たちのマカロニ、そんなステキなマカロニウエスタン末期の傑作なのであった。
それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。では失敬。