BUCK and the PREACHER
1972年。監督シドニー・ポワチエ。主演シドニー・ポワチエ。音楽ベニー・カーター。
“南北戦争が終わり、奴隷は解放されたが、土地と自由の約束は守られなかった。多くの元奴隷は真の自由を求めて、西部へと旅立った。
彼らは西部に詳しい黒人の馬車隊の案内人に希望を託したが、旅は楽ではなかった。苛酷な自然に加え、彼らを農園に連れ戻そうと秘密結社の人間や賞金稼ぎが雇われたのだ。
この映画を、歴史に埋もれ名もなき墓に眠る老若男女にささげる”
ちょっと長いがオープニングの監督のメッセージをそのまま引用するのであった。
ブルージーというかジャジーなオープニングで映像と音楽が止まり映写機のリール音だけが鳴るなか、上記の監督からのメッセージが流れる。
メッセージが終わるとふたたび音楽と共に映像が動き出す。非常にカッコいい。
今まで見た西部劇では今回の「ブラック・ライダー」か「明日に向かって撃て」のオープニングが最高にカッコいいのであった。
ストーリーはシンプル、というか迷いがない。
そんな感じである。
解放された黒人たちを安全で肥沃な土地まで案内することを生業とするバックが、ある黒人コミュニティをコロラドまで送り届けるまでに、ふとしたことで知り合った牧師ラザフォードと協力し、最後はネイティブに助けてもらい、黒人たちを農園に連れ戻そうとする白人結社をぶち殺す。
という素敵な映画である。
わかりやすい。
余計なことを一切詰め込んだりしないのでストレートに響いてくるのだった。
バックが私用でしばし離れている隙にコミュニティは白人結社に襲撃され、コツコツと貯めた金を奪われてしまう。
その金がないと新天地でどうしようもないし、移動すら続けられない。ってことでバックはラザフォードと共に白人結社の根城を急襲するのである。
ここが喝采なのであった。
やれ、やっちまえ、ぶち殺せ、である。
とにかく白人結社がムカつくのでカタルシス満点である。でも白人結社の連中はすでに金のほとんどを使ってしまっていた。
ふざけた連中だ。
というわけでバックたちは銀行強盗をするのである。とてもわかりやすい思考回路なのであった。
アメリカという国が抱える闇を真っ向から扱っているが、堅苦しく陰気くさくなることもなく痛快に描いている。
ユーモアを交えながらも、もちろんふざけているわけでもない絶妙なバランスが素晴らしい。
クソ真面目なバックと胡散臭いラザフォードのバディ。70年代のカウンターカルチャー、ベトナム反戦運動といった時代背景を知ってようが知るまいが、見ればなにかを感じとることができるだろうし、ずっと後まで忘れることのできない映画になると思う。
国内盤DVDが出てないのが残念だ。でも必見。とにかく、誠実さのかけらもなく/笑っている奴がいるよ/隠しているその手を見せてみろよ、である。
それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。では失敬。