RIDE THE HIGH COUNTRY
1962年。監督サム・ペキンパー。主演ランドルフ・スコット。ジョエル・マクリー。音楽ジョージ・バスマン。
実質的な、サム・ペキンパーの西部劇監督第1作といわれているようであった。この「昼下りの決斗」から最後の西部劇となる「ビリー・ザ・キッド 21才の生涯」までペキンパーは一貫したテーマにこだわっている。
古い時代の終わりと新しい時代の始まり。
時代に取り残される男たち、止められない時代の流れの中でも己を失わない男を徹底的に描く監督だ。そしてとにかく風景が美しい。山を登り、そして下るという映画なので西部の美しく厳しい大自然をダイナミックに、マジェスティックに存分に描いているのであった。
で、こんな話さ。
元保安官のスティーブは短期バイトで、鉱山から銀行へと金塊を運ぶのであった。中途で加わるめんどくさい女子エルザに混乱したり、仲間の裏切りにあったりしながら金塊を運んでいく。
冒頭から「いやあ、かつては自分も凄くてね」って感じ全開というわけではないのだが、なんか凄かったみたい昔は、という空気は伝わる元保安官のスティーブ。
彼がひょこひょこと馬でたどり着いたのと同時に町はレースでパーリーみたいになってたのであった。それを自分の歓迎パーリーと勘違いしてしまって、はは、どうもーなんつって手を振るが、どけよジジイ、みたいに叱られていきなり悲哀度マックスなのであった。
依頼主の銀行でも、もっとピチピチした奴かと思っててん、などとあからさまに失望されるのであった。契約書にサインをするのも老眼で難儀だったりするのであった。でもスティーブにはプライドがあるのであった。
俺はまだまだやれるはずだと。
でも、さすがのスティーブでもひとりでやるのはしんどいな、嫌だなって思って助手を二人つけることにするのだが、ひとりは保安官時代の相棒のギルで、もうひとりは町の若者ヘック。
でもかつての相棒ギルはなんだかインチキ興行師みたいになっていて、確かに輝いていた頃の誇りとかプライドとかもなくなって残念な感じになってた。なんかセコくなってた。この下り坂のギルがランドルフ・スコットである。涙が出そうだ。
とりあえずいこうよ、って山を登っていき、一晩泊めてもらう手筈の山の農家にたどり着いてそこの一人娘エルザに出会う。そこのオヤジが面倒くさいくらいに敬虔なクリスチャンで、俺の娘に触るな、寄るな、散れ、などと鬱陶しくてかなわんのだが、阿呆なヘックは空気が読めないのでエルザに手を出そうとするのであった。
この辺りから金塊運搬ではなくエルザを中心とした話になっていくのが凄い。というのも結局はこのエルザもパパと同じくらい面倒くさい娘で、わたしは遥かなる女ルルル~、などと鉱山にいる彼氏のような男ビリーと結婚すると言い出し出発したスティーブ御一行を追いかけるのである。で、本当に結婚してしまう。
あちゃあ、ってなるのに時間はいらなかったよね。ビリーとその4兄弟はとんでもない連中だった。マカロニ並の変態だった。
こりゃ実家のほうがマシですわ、帰ります、ってエルザはなるのだがそうはいかない。判事が承認した正式な婚姻なのだ。でもスティーブ御一行は強引にエルザを連れていく。ああ面倒だ、参った、スティーブが思ったかどうかはわからないがそんな表情は一瞬も見せない。西部の男だから。
さらに参ったことに帰路の途中でギルが謀反を起こすのである。報酬だけでは満足できず、だったら金塊丸ごとパクっちまえばよくね?って思ってヘックもそのつもりでついてきていて、スティーブにもそれとなく打診してみるのだが誉れ高い元保安官の矜持を捨ててないスティーブは話にならない。さらにヘックまでもが西部の男スティーブに接していくうちに感化されていき、なんかそういうのは嫌だな、などと言い出してしまい結局バレて失敗に終わった。
スティーブの悲しみは深かった。セコい男になったのお、とは思いつつ信じていたギルに見事に裏切られたのだ。ランドルフ・スコットに。泣きそう。
当然のことにビリーと変態兄弟もしつこくて、エルザを返せと最後は決斗になる。一度は夜更けに逃走したギルもスティーブを助けるために戻ってくる。完全に腐ったわけではなかったのだ。
やっぱランドルフ・スコットでしたよ!西部の男として帰還を果たしたわけですよ!だがヘックは足を撃たれて戦線離脱で数的不利な状況だ。でもスティーブは言う。いつものように正面突破だ!「ワイルドバンチ」である。
↓決斗に挑む不屈の二人↓
そして2対3の決斗で幕を閉じる。金塊ではなく道連れのどうでもいい女エルザを守るために命を賭けて闘う二人の西部の男。熱い。熱すぎるのであった。
主演の二人は本作を以て引退。最高のフィナーレである。
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それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。
では失敬。