明日会おうよベストな体調で

西部劇、マカロニウエスタン、ときどきアメコミ。

【殺しが静かにやって来る】


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IL GRANDE SILENZIO

1968年。監督セルジオ・コルブッチ。主演ジャン=ルイ・トランティニャン。音楽エンニオ・モリコーネ。
何度観ても、やはり後味が悪い。わかっていても、悪い。明日になんかならなきゃいいのに、わけもなくそう思ってしまう。でも風景は美しい。ウエスタンでは珍しい白銀の世界がとても美しいのである。

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映画「殺しが静かにやって来る」より

で、こんな話さ。

雪に埋もれたスノーヒルでは合法で人間狩りが行われているのであった。悪徳判事ポリカットの策略によって職を失った住民たちは、野盗に成り下がるはめになったのである。さらに狡猾な判事は野盗らに賞金をかけ、賞金稼ぎに始末させていたのである。町に住むポーリーンもまた、夫を賞金稼ぎロコに殺されてしまった。ポーリーンは賞金稼ぎをターゲットにする殺し屋サイレンスに復讐を依頼するのだが。

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映画「殺しが静かにやって来る」より

言葉を発しないサイレンスは相手が銃を抜くまで撃つことはない。あくまで正当防衛によって依頼をこなすのである。

やはり賞金稼ぎのロコである。ロコを演じていたのはヘルツォークの映画によく出てた俳優さん。ステレオタイプな悪人面はポリカットなのだが、ロコの人懐っこい面構えが恐ろしい。サイレンスに挑発されても動じることのない自制心をもってるあたりもゾクっとする。

悪の根源、ラスボスだがロコに比べればポリカットなんぞは大した男ではないのだ。

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映画「殺しが静かにやって来る」より

このマカロニの凄さは、善と悪の境界線がぼんやりしているところにある。理由はどうあれ、賞金稼ぎが殺しまくるのは賞金首である。合法なのだ。通常のウエスタンなら賞金稼ぎは観客サイドにつく立場である。だがここでは反転してしまっている。

というか、誰も悪いことをしていない、と言えないこともない。

でも、やはりモヤモヤするのである。この輪郭の曖昧な善悪に力業で、誰もが納得できる形でラインを引こうとしたのが、人間狩りを終わらせるために赴任してきた保安官なのだが、失敗に終わる。

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映画「殺しが静かにやって来る」より

ぽたぽた焼きなんかを食べながら、ふわっと観てたら大ケガしそうだ。コルブッチに銃口を突きつけられたようなものである。正義とはなんだ?悪とはなんだ?お前の正義は未来永劫の正義なのか?と。

とにかくマカロニ史上最悪の賞金稼ぎロコを堪能されたし。

それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。では失敬。

 

 セルジオ・コルブッチ監督の他のマカロニウエスタンというわけさ↓

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