片手にドーナツ、心に花束

西部劇、マカロニウエスタン、ときどきアメコミ。

【駅馬車】


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STAGECOACH

1939年。監督ジョン・フォード。主演ジョン・ウェイン。音楽ボリス・モロース。

マカロニ・ウエスタンをレオーネで三連投してみたので今回は、王道のウエスタンにしてみましたよ。マカロニを見るならまず「荒野の用心棒」でしょ、というならハリウッドウエスタンならまずはこれでしょ、というやつをやりますよ。

言わずと知れた西部劇の名作なのであった。

というか、西部劇という枠を目一杯に飛び越えて映画そのもののお手本となるような作品、とされている。らしい。

父親が好きな映画だ。

子供の頃に見ているが、当時はよくわかってなかった。当たり前だが。季節は巡り時は流れてあらためて見てみると、あれ?ってなって、確かに面白いのであった。

なにがおもしろいのかというと、なんだろう、ってなるのだが、とにかく瞬く間の90分なのであった。つまりは映画の基本的エッセンスを存分に詰め込んでいるということなのだろう。

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映画「駅馬車」より

 

で、タイトルである駅馬車とは何か。

簡単にいえば、今でいう長距離高速バスのようなものである。

もちろん馬車なので高速とはいえないが、欧米において17~19世紀に活躍し、アメリカでは1740年代に運行が開始されたそうである。

鉄道網が整備されるまでは主要な交通手段だったわけだ。セントルイスからサンフランシスコまでの大陸横断便は所要日数23日。

なかなかの長旅だ。

アメリカでの最盛期は1860年代で、多くの会社が定期路線を開いていた。

最終的には二社に統合され、そのうちの一社がウェルズ・ファーゴ社というのだが後にアメリカンエクスプレス社になる。へー。

長くなった。

肝心なのは映画だ。

で、こんな話さ。

トントからローズバーグへ向かう駅馬車に乗り合わせた9人の男女の群像劇。ネイティブの襲撃にあったり、新しい生命の誕生に立ち会ったりしながら駅馬車は走る。

 

それぞれキャラが立っているのだった。

馭者、保安官、医師、娼婦、人妻、ギャンブラー、酒商人、銀行家、脱獄犯の9人だ。

それぞれがそれぞれの事情を抱えて乗り合わせたのである。特にいいのが、品がないとかそんな理由で権力者の主婦連合によって街から追放されてしまった娼婦のダラスとアル中医師のブーンだ。

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映画「駅馬車」より

 

ブーンが抱えている鞄は隣の酒商人の荷物だよ。もちろんお酒が入ってるよ。

娼婦ダラスは他の乗客からも冷たい視線を浴びる。とりわけ人妻のボディーガードを勝手に名乗り出たギャンブラーは露骨な態度をとるのである。キーっ。

そんな偏見に満ちた乗客の中で、途中乗車の脱獄犯リンゴ・キッドは優しかったよ。僕もそんな男になりたいよ。

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映画「駅馬車」より

 

それにつけてもこのジョン・ウェインはいい。ジョン・ウェインに対して思い入れはまったくないのだが、リンゴ・キッドは最高である。

男前である。

でもそれ以上にダラスがいい。

どんなに蔑まれても産気付いた人妻を甲斐甲斐しく看病し、産まれたばかりの赤ん坊をいとおしく抱きかかえる。

「駅馬車」は、ダラスの再生の物語である。

近代化が進む西部の街から弾き出された女性が、運命的な出会いを経て新しい人生に旅立つ物語なのだ。

もちろん派手なアクションもある。

アパッチ族襲撃のシーンではなかなかのスタントが見られる。この時代の西部劇はインディアン=悪という図式が当然のように存在していてイラっとしないでもないが、こればかりはどうしようもない。

幾多の困難を乗り越えることで乗客たちに絆が生まれていく。

それぞれの人間性の回復。人間も捨てたもんじゃない、クラトゥにそう言われそうな感じだ。

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映画「駅馬車」より

 

そしてラストのささやかなサプライズにうっすらと涙ぐむ自分に乾杯。

それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。では失敬。

 

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