I quattro dell apocalsse
1975年。監督ルチオ・フルチ。主演ファビオ・テスティ。音楽フランコ・ピクシオ。
監督はフルチである。ホラーの帝王である。でも残虐シーンなんかはあまりない。いや、あるんだけど、そうじゃない。
これは、マカロニ的黙示録ロードムービーである。
なんだそれ?
で、こんな話さ。
町の住民による粛清騒動に出くわしたギャンブラーのスタビーは牢屋で知り合った売春婦バニー、墓掘りバット、アル中クレムらと共に、かなわんなー、などと我が身を案じていたが、命は助かった。でも町を追放されてしまい四人は貧相な荷馬車で旅をつづけることになるのだった。
中途で「活けるキリスト教徒」の一団と交流したあと、ハンターらしき男チャコが仲間に加わりたいと申し込んできたのである。
怪しい、というかやはり悪いやつにしか見えなかったチャコ。
チャコは射撃が得意なので狩猟とかしてくれて食糧に困らず、良かったよね、食べるのって基本だよね、などと単細胞のバットなどは喜んでいたがやはりそんなことはなかった。チャコはやっぱ悪人だったのである。
そしてフルチらしい演出もある。少しだけだが、やっぱある。
旅をつづけていくうちに、ひとり、またひとりと、スタビーは仲間を失っていくのであった。
そして女子のいない山の上の貧しい町でバニーは子供を産むのだが、子供は町の男たち全員に祝福されて、ラッキーと名付けられる。ここのくだりがとてもいい。あまりに不条理な運命に翻弄される仲間たちや、チャコによって虐殺された「活けるキリスト教徒」たちの生まれ変わりかのように、ラッキーはこのくたびれた終末的世界に降臨する。
誰も生まれるはずのなかった、終末感漂う町に起きた奇跡。
マカロニウエスタンのような、そうではないような不思議な映画である。宗教的死生観に覆われている。アメリカンニューシネマの雰囲気もある。フォーク調というか、サイモン&ガーファンクルみたいな曲が全編を通して流れるのもまた、いい。
それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。では失敬。