GLI SPECIALISTI
1969年。監督セルジオ・コルブッチ。主演ジョニー・アリディー。音楽アンジェロ・フランチェスコ・ラヴァニーノ。
主人公ハッドを演じたジョニー・アリディーはフランスの歌手だそうだ。どんな歌手かは知らないが、確かに妙にカッコよかった。
冒頭、町から離れた駅馬車の休憩所みたいなとこで、名も無き悪党どもがヒッピー4人組(もちろん西部劇なのでヒッピーではないが)を泥まみれにしていたぶるという意味不明なことをしていて、居合わせた連中の金品を強奪して悪行三昧。
こいつらをハッドは早撃ちで仕留めるのだが、登場の仕方がクール。悪党の一人が無人の酒場で勝手に樽で酒を飲んでいると、暗がりから全身黒いオシャレさんのハッドが背後から声をかける。
いいから飲みつづけろよ、とやさしいことを言うがもちろん射殺である。その他の悪党も射殺である。ハッドが酒場でひとり何をしていたかは不明だ。
ストーリーはこれぞマカロニ!という無実なのにリンチされて殺された兄を想う弟の復讐劇。そこに兄が隠した大金の謎を巡るミステリーが絡んでくる。実に安定した展開である。のだが。
主人公ハッドを演じたのがフランス人歌手ということで、まあ素敵、なわけだがスマートすぎて復讐に燃える男感が足りない。
でもカッコいいので構わないと思う。上着を脱ぐと珍しいチョッキを着ているなと思ったがそれは鎖かたびらで、え、ってなったけどそれすらスマートなのである。
困ってしまうのが保安官で、西部劇では主人公の保安官はいい人で、それ以外の保安官はヘタレか悪徳と決まっている。
でも今回の保安官はいい奴なのか悪い奴なのか中途半端で、結果的にはいい奴なのか?という感じである。でも彼のハイライトは隠し金を狙っている山賊のボス・ディアブロとの意味不明な頭突きマッチで、そこでは確かに輝いていた。
で、とても気になるのはヒッピーたちの扱いで、冒頭でハッドに助けられると、子分にしてくれよ、みたいな感じでつきまとうも冷たくあしらわれてしまうのだが、その後は意味もなく町中をウロウロしてよくわからない役回りである。
ハッドを助けたりするのかと思いきや、そんな素振りは微塵もなく、というか衝撃のラストに流れこむ。真犯人も大金の行方も判明し、終わったね、よかったよね、となったのだがそこへヒッピーたちが蛇足ともいえるさらなるラストを用意してくれるのである。
画的にもなかなかショッキングな展開で、ここにきて、あ、コルブッチ監督はヒッピー嫌いだったな、ということを思い出した。ヒッピーたちの扱いが、コルブッチだな、と思ったわけである。
監督のセルジオ・コルブッチはガチガチに左寄りの人で、アメリカンニューシネマが大嫌いで、マカロニウエスタンでは革命三部作なるものを撮ったりもしている。
話は逸れるが、昨年見たタランティーノの「ワンス・ア・タイム・イン・ハリウッド」では、落ち目になったディカプリオがマカロニウエスタンに出演することになる。
そのときのマカロニの監督がコルブッチという設定になっていて、まあ単にタランティーノがコルブッチ好きということもあるだろうが、多幸感に満ちたラストのブラピとディカプリオのヒッピーに対するバイオレンスはコルブッチに捧げられたのではないかと思ってしまった。
話が逸れた。でも逸れたまま終了。
それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。では失敬。
↓セルジオ・コルブッチの作品。