CAMPA CAROGNA...LA TAGLIA CRESCE
1973年。監督ジュゼッペ・ロサティ。主演ジャンニ・ガルコ。音楽ニコ・フィデンコ。
主人公の名前がコーランなのであった。
一応ポッケにコーランを持ち歩いている。ハットの下にイスラム教徒かユダヤ教徒っぽい帽子をかぶっている。
でも、やっぱりイスラム教徒っぽくはなかった。
傘型仕込み銃・GUNブレラを所持し、佐々木小次郎の刀のような物干し竿みたいな長身ライフルを背中に備えていたりと、なんだかイスラム教徒とかどうでもよくね?ってくらいに色々と詰め込みすぎの賞金稼ぎなのであった。
演じるのはサルタナで有名なジャンニ・ガルコてある。で、主役がそんなんだから軍人三人組のほうが主役っぽい。実際、三人組のリーダーである大佐が最初にクレジットされてたような気がする。まあ、どうでもいいが。
とにかくマカロニでは珍しい三人組の軍人が主役級キャラだ↓
で、こんな話さ。
テキサスをメキシコに奪還することを目論むテロリスト集団が、輸送中のアメリカ軍の武器が強奪し、さらには軍医の娘までさらう、という事件が起きる。で、本部から派遣された軍人三人組と賞金稼ぎコーランが協力したり出し抜いたりしながら武器の破壊と娘の救出を目指すのである。
テロリスト集団のナンバー2だか3くらいの男アンジェロが1000ドルの賞金首で、賞金稼ぎであるコーランはこいつだけが目当てで他のことに興味ない。
でもせっかく捕らえたアンジェロは娘をさらわれた軍医のせいで逃げられ、軍人三人組に奪われ、また逃げられ、また奪い返してと、なにをやっとるんじゃいぬけ作が、などと文句をたれたくなるほどにコーランがまるでだらしがないのであった。
でもなんか楽しげ。
牧歌的な音楽のせいもあって、全体的にのほほん、としているのであった。軍隊の宿舎内で唐突に軍人たちが殴りあいをはじめたりもする。不思議な空気である。
敵であるメキシコのテロリスト集団も、まず頭領であるロペスが痛い。ナポレオンを崇拝していて、自らを皇帝と呼称するよう指示して確かにそれっぽい服を着ている。でも軽い健忘症だ。そして完全な誇大妄想狂だ。
アメリカに戦争を仕向けるつもりなのだが、隠れ家が洞穴だ。古い修道院の廃墟らしいが、ただの奥行きのある洞穴だ。さらにはけっこう情けない最期だ。
こんな奴にアメリカ政府は手を焼いていたのかと思わないでもない↓
さらには部下に「哲学屋」と呼ばれる男がいる。
残念だが、たいして哲学的な台詞があるわけではないのであった。矢吹駆のように形而上学的なことをほざいたり、現象学を駆使して凄い作戦を遂行するわけではない。
ただ、眼鏡をかけている。それだけであった。
知的な印象は眼鏡だけだ。ラストも間抜けだ。もっと哲学を使えと言いたい。
こいつが噂の哲学屋だ。偉そうなだけでインテリさの欠片もないぞ↓
かように、山盛りである。でも不思議とあっさりなのである。きっと演出、編集がいいのだろう。目的の一つである軍医の娘救出も失敗したくせに、ラストは陽気に四人で仲良く荒野をゆくのである。でも気にならない。監督がいいのだろう。
それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。では失敬。