片手にドーナツ、心に花束

西部劇、マカロニウエスタン、ときどきアメコミ。

【必殺の一弾】

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THE FASTEST GUN ALIVE

1956年。監督ラッセル・ラウス。主演グレン・フォード。音楽アンドレ・プレヴィン。

 

とにかく無駄がなくテンポよく進んでいく。非常にコンパクトにまとまっていて、まあ後には何も残らないが、実に偏差値の高い西部劇なのであった。主人公はいっつも汗をかいてるようで、なんかパッとしない地味な奴だが痛快な作品である。

妻に隠れてこそこそと射撃の練習に勤しむジョージは雑貨屋を営んでいる男であった。今でこそ雑貨屋なんぞにあまんじているが本当のオレは西部ナンバーワンの早撃ち、ここではないどこかで本来のオレとして生きていきたい、などと思っているわけだがそうもいかないのであった。父親ゆずりの早撃ちガンマンであったジョージだが、もう拳銃は捨てた、酒も飲まねえ、堅実に生きると妻のドーラに約束しているとゆうわけだ。

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映画「必殺の一弾」より

 

クロスクリークの住民どもは、エセガンマンしかいないこの町民どもはジョージが実は凄い、ということを知らない。たたの冴えない雑貨屋としてしか見てないのである。そんなある日にシルバーラピッドという町で西部一の早撃ちと称されているファロンがハロルドとかいうならず者に敗北したとのビッグニュースが飛び込んできたのであった。クロスクリークの町はその話題でもちきりとなるが、面白くないのはジョージである。なぜなら自分こそが西部一の早撃ちだと自画自賛しているからである。

クソっ、などとイライラしてやめたはずの酒を飲み、楽しく語らっている連中にあたり散らし遂にはオレはホントは凄いのだ!などと銃の腕前を披露してしまうのであった。すげえじゃん、と愚劣な町民どもに称賛されていい気になるジョージだが、ファロンを破ったハロルドがクロスクリークに向かっているとの情報が入ってくる。いけない。オレのようなすげえ早撃ちがここにいると知られたら挑戦されるに決まってる、だから町を出よう、などと飛躍した思考で周囲に宣言するのだが、町民どもは絶対にキミのことは黙ってるから大丈夫さ、と引き留めるのだった。でもすぐにハロルドにバレてしまうのだった。結局なんやかんやでハロルドと対決することになるジョージ。どうなるジョージ。ぽん。

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映画「必殺の一弾」より

 

自分の凄さをみんなに言いたい。でも言えない。でも言った。どうなってんだよジョージ。雑貨屋をバカにすんなよジョージ。普通に生きるっていいぜジョージ。とまあジョージにはいろいろと意見したくなるのだが、それはいい。冴えない男が実は強い、というのはとても好きなのだがそれはやはり本人がそのことを周囲に誇示するつもりはない、というのが前提であるべきで、言いたい、などと思い悩むなどもってのほかである。お前は凄い、と手紙を書いて自分で自分に送るのではないかすら思った。そこが残念だなあ、と個人的には思うが、不思議な空気が漂うウエスタンで面白い。善とか悪とか復讐とか愛憎とかでない、単にガンマンのダメダメ感を前面に押し出した珍しい西部劇なのであった。


それじゃあ読者諸君、毎日は哀しいだけじゃない。愉しいだけじゃない。では失敬。