IL RITORNO DI RINGO
1965年。監督ドゥッチョ・テッサリ。主演ジュリアーノ・ジェンマ。音楽エンニオ・モリコーネ。
同じジェンマだが「荒野の1ドル銀貨」の続編ではない。ややこしい。監督・主演は「夕陽の用心棒」の二人である。むしろこっちの続編という感じである。続編というより前日譚という感じだ。同じリンゴが主人公だしね。だけどリンゴのキャラはまったく違う。「夕陽の用心棒」のリンゴは飄々としてパリピみたいな感じだが、というのは盛りすぎだが、軽いタッチの男だった。でも今回のリンゴは重い。
で、こんな話さ。
南北戦争が終わり故郷に帰ってきたリンゴ。でも実家は変なメキシコ人兄弟に乗っ取られ、町もまたその兄弟に蹂躙されているのだった。妻をも奪われたリンゴは戦いを挑む。
↓見事な金髪。なかなかのレア・ジェンマ↓
西部劇では南北戦争から帰還すると大抵ろくなことがない。今回もそのようになり、すべてを失ったリンゴは戦うのだが、仲間もいるのだ。西部劇ではこのような場合、ほぼ孤独な戦うを強いられるのだが、ジェンマは違う。あまり孤独にはならない。ボロボロになって孤軍奮闘しているジェンマより、最悪な状況ながらも仲間とさわやかに立ち向かうジェンマのほうがいいのだろう。そんなジェンマ、いやリンゴを助けるのは忘れな草という花屋の男である。なんというセンス!名前からするとスラッとしてて、できれば顔色が悪いような男をイメージしそうだが、違うよ。背の低いメガネの初老の男だよ。
↓右の男が忘れな草だ!↓
我が物顔のメキシコ人兄弟の兄貴エステバンはマカロニ界のジャイアンことフェルナンド・サンチョである。この兄弟の悪人ぶりがどこか中途半端である。リンゴの奥さんハリーを奪った弟パコはリンゴの戦死が確定するまで籍は入れない生真面目さ。結局は偽装するが真面目だ。リンゴが兄弟の屋敷(リンゴの実家だが)に潜入してるのを見つけても叱責するだけである。まあ、そんなところがジェンマにはマッチしている。思えば「夕陽の用心棒」もそうだった。
なんというか、さっさとカチコめよ!いつまで花屋なんかやってるんだよ!と思わないでもない展開で、やきもきしたりもするのだが、それもまたジェンマだ。いいじゃないか。
リンゴとハリーが再会するシーンで流れる音楽が印象的だ。やたらと占いたがるエステバンのカノジョさんロシタやヘタレ保安官、住民が一斉蜂起で暴れまくるラストは爽快である。
決戦に挑む忘れな草とヘタレ保安官の渋すぎる後ろ姿。震えましたよ!魂が解放されましたよ!花屋と保安官!花屋と保安官ですよ!マカロニウエスタン史上最も熱いサブキャラの後ろ姿だ。
それじゃあ読者諸君、毎日は愉しいだけじゃない。哀しいだけじゃない。では失敬。
つながりはないけど、一応。↓
同コンビの監督・主演によるマカロニ。主人公の名前は同じだけど関係ないよ。↓